保険の入れ歯は噛めないの?(結論:そんなことはありません)

2019/4/25公開 (2019/8/15更新)

こんにちは。 陽だまり歯科院長の猿田陽平です!

今回は義歯(入れ歯)の事について話そうと思います。

以前、患者さんに質問された事があります。

自費の入れ歯はちゃんと噛めるけど、保険の入れ歯はあまり噛めないように作られているって本当ですか?

みなさんもこういうイメージでしょうか?

確かに自費の入れ歯の方が材質の都合、有利な場合が多いですが、

少なくとも保険の入れ歯だからと言って噛めないと決まっているわけではありません。 逆に自費の入れ歯だからと言って絶対に噛めるわけでもありません。

保険の入れ歯と、自費の入れ歯の違い

ズバリ、入れ歯に使われている素材が違います。

分かりやすい例だと、金属+プラスチックの入れ歯と、プラスチックのみの入れ歯などがあります。

保険の入れ歯の場合、国に定められた素材しか使うことができませんが、自費の場合は自由に素材を選べるので、より優れた素材で入れ歯を作ることができます。

強度的にも優れているので、部分入れ歯の場合だと、このように金属のバネのない入れ歯を作ることもできます。

前から見た時に金属が見えません。

このように、確かに自費の入れ歯は優れているのですが

自費の入れ歯じゃないと噛めない

というわけではなく、保険の入れ歯を標準として、

より優れた素材を使っているのが自費の入れ歯

とお考えください。

インプラント・オーバー・デンチャー

通常、入れ歯は歯ぐきとあごの骨で支えますが、インプラントが入れ歯を支える【インプラント・オーバー・デンチャー】という入れ歯もあります。

こちらはインプラントがしっかりと入れ歯を支えるので、保険・自費問わず、通常の入れ歯と比較するとよく噛めます。

なぜ保険の入れ歯は噛めないと思われやすいのか

街の歯医者さんから入れ歯を専門としている先生が減ってきていると言われています。 もしかするとこれが理由かもしれません。

なぜ街の歯医者さんから入れ歯専門の先生が減ってきているかというと……

8020運動と言うものをご存知でしょうか?

「ハチマルニイマル」と読みます。
80歳の段階で自分の歯を20本以上残そうという運動です。

「8020(ハチマルニイマル)運動」とは?

いつまでもおいしいものを食べ続けるための元気な歯は、日々の手入れから。

1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。 20本以上の 歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。 そのため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動 が始まりました。 楽しく充実した食生活を送り続けるためには、妊産婦を含めて生まれてから亡くなるまでの全てのライフステージで健康な歯を保つことが大切 です。 ぜひ「8020」を目指してください。

最近ではテレビで聞くのも珍しくなくなった「予防歯科」や「フッ素」などはこの8020運動の影響で普及してきた言葉です。

この取り組みの甲斐あってか、厚生労働省の出している歯科疾患実態調査の結果によると、60歳以上で20本以上歯が残っている方の、1993年から24年間の推移は次の通りです。

縦軸は%で、2016年の60代ですと、調査対象となった方のうち79.1%の方が20本以上の歯をお持ちだったということになります。
8020運動の基準である80歳以上だと、この24年間で5倍近い方が達成できるようになっています。

この結果にともなって、現在は入れ歯を使用されている患者さんは減少傾向にあります。
入れ歯に頼らずとも自分の歯で食べることが出来る人が増えてきたから、入れ歯を必要としている方が減ってきているんですね。

ところが。

入れ歯の患者さんが減ってきているということは、歯科医師が入れ歯治療に触れる機会が減っていき、僕たち歯科医師にとっては入れ歯に関しての腕を磨く機会が少なくなってきている事を意味します。
この結果、街の歯医者さんから入れ歯を専門としている歯科医師が減ってきていると言われています。

僕は大学卒業後、そのまま大学病院の入れ歯専門の科に研修期間を含め、5年在籍しました。
大学で勤務している時に学外研修として週2回、福岡市だけでなく久留米市、田川郡、熊本市、玉名市など、様々な場所で研修を積んできました。 この経験の中で見てみても、町の歯医者さんでは入れ歯に触れる機会はかなり少ない印象でした。

僕が大学で義歯を専攻した理由はここにあります。

開業医では減ってきているとは言っても、大学病院には入れ歯専門の科があり、そこでの専門的な治療を必要としている患者さんが大勢いらっしゃいます。 大学病院にいるうちに義歯にたくさん触れ、開業医では触れる機会が減少してきている義歯に関して、しっかりした知識と経験を積もうと考えたからです。

入れ歯を作ったことのある方はご存じだと思いますが、入れ歯治療には回数がかかります。
いくら大学病院へ行けばしっかりとした治療が受けられるとはいえ、大学病院へ何度も通うのはとても大変なことだと思います。

さらに、大学病院では設備面など、開業医では受けることができないような治療を受けられる反面、当然、ひとつの治療に時間がかかり、患者さんも非常に多いので、予約も取りづらくなります。
僕が大学で治療を行っていたころは、新しく治療を始める患者さんは2か月先になる事もありました。 関東の方の(主に都内)大学で入れ歯の治療を受けようとする方は、半年~1年待ちは覚悟しなければならないこともあります。九州の方はまだ恵まれてる方かもしれません。

こんな中で、街の歯医者でもしっかりと噛める入れ歯を作りたい
これが僕の入れ歯治療に対する思いです。

噛める入れ歯を作るには患者さんの協力も不可欠です

入れ歯ができるまでの流れは

  1. お口の中の状態を確認させていただき、どのような入れ歯を作るかを検討します
  2. お口の中の型を取ります
  3. 噛み合わせの状態を確認します
  4. 蝋で出来た入れ歯で、実際にお口の中に入れた状態を確認します
  5. 最終的な入れ歯を作ります

という流れになっています。

ですが!

完成品の入れ歯をお渡ししてもそこで治療が終わりではありません。 ここから「調整」という作業が始まります。

実際に使ってみて痛いところはないか
実際に使ってみてちゃんと噛めているか

「調整」はこの「実際に使ってみて」という部分に合わせていくとても重要な作業です。 1回で調整が終わる場合もありますが、あごや歯ぐきの状態によってはかなりの回数通っていただかなければならない場合もあります。

「もう入れ歯はできあがってるのに…」ととてもご不便をおかけてしまうのですが、調整を終えて初めて入れ歯治療が終わります。 ちゃんと噛める入れ歯を作るためには、調整まで含めて入れ歯治療だということをご理解いただき、最後まで患者さんにもご協力いたければと思います。

当院の入れ歯治療への3つのこだわり

ついでに、僕の入れ歯治療に対するこだわりも宣伝させてください!

1.「噛めない入れ歯は作る意味がない」

これは僕が大学で入れ歯の治療に携わっていた時の当時の教授の教えです。
噛めない入れ歯は作る意味がない

入れ歯に限らず広義の「義歯」に求められていることは「噛めること」だけではありませんが、この教えもあり、僕はまず「痛みがなく噛める入れ歯」であることを目標にしています。

義歯の【義】と言う漢字を調べると次のような意味があります。

ある関係を本質として持たないものが、その関係を結ぶこと。

引用元:精選版 日本国語大辞典

義手・義足・義眼・義歯等。
確かに、前歯がなくなって入れ歯になるとしたら、見た目も気になると思います。
しかし、義歯は「義の歯」として機能して初めて意味をなすものだと僕は考えています。

もちろん、症例によっては審美的な意味で入れ歯を作ることもありますし、これまでも様々なニーズに応じて入れ歯を作ってきました。

しかし入れ歯を作る場合の多くはやはり「噛めなくなったから」とか「今までの入れ歯が合わないから」等の意見が大多数を占めます。

となると僕の第一目標もやはり『噛めること』になります。
噛めるようになるという目標が達成されてはじめて、次の目標を立てます。

  • 見た目が気になる
  • 前歯をもっと自然にしたい
  • 前歯の形や色が気になる

噛める入れ歯を作るのは本当に難しいことだと今でも考えています。

良い型取りをして。
良い材料を使って。
時間をたっぷりかけて。

それでも、院内で良かれと思って調整を行っても、実際に患者さんが家に帰って、食事をしたら、痛くて食事が出来ないと言うことが多々あります。

そこが一番の難所です。

僕たち歯科医師は、患者さんが実際に食事をしているところに四六時中はりついて診ることが出来ません

どんな食べ物を(固いのか柔らかいのか)
どんな形にして(賽の目切りされてるのか、塊なのか)
どういう風に(右側で噛む癖があるのか、左側で噛むのか、それとも前歯で噛むのか)

入れ歯を作ったあとに、この実際の使用感に合わせて調整を何度も行い、ようやく噛める入れ歯ができあがります。

先ほども書きましたが、この調整にはかなりの回数をいただく場合があります。
実際に、上下ともに総入れ歯の場合だと、平均で7回程の調整回数が必要という統計も出ています。

入れ歯は作って終わりではないのです。

作った後に、その入れ歯で傷みなく噛めるまでが治療の一環です。

新しい靴をおろしたばかりで、ジョギングすると靴擦れがおきたりしますよね?
それと同じことです。
新しい入れ歯を作ったばかりで、おせんべいなどを噛むと、歯ぐきに傷が出来たりします。 痛くなく食事が出来るまでが、僕たちの仕事なのです。

2.患者さん目線での良い入れ歯

僕の出身大学では、当時、入れ歯の疑似体験実習というものがありました。

入れ歯と同じように上あごすべてを覆うような仮想の入れ歯をプラスチックで作り、それを装着したままご飯を食べたり、ポリグリップやポリデントのような義歯安定剤を実際に使ってみるというものです。
この経験を通して、歯科医師の立場から一方的に入れ歯を作るのではなく、実際に入れ歯を使う人の気持ちを知った上で入れ歯を作ることができるようになるための試みですね。

このような実習は大学によってあったりなかったりしますが、僕は運よくこの実習を体験することができました。 この時の経験が今の僕の入れ歯治療にとても役に立っていると思います。

歯科医師として良い入れ歯であることもそうですが、まずは患者さんにとっての良い入れ歯

この経験を活かして、患者さんの目線から入れ歯に向き合っていきたいと考えています。

3.保険治療でもちゃんと噛める入れ歯を

最初にお断りしておかなければならないことがあります。
僕たち歯科医師は、自費でも保険でもちゃんと噛める入れ歯を作ろうとしていますが、そもそも入れ歯が本来の歯と同じくらい噛めるものではない、ということです。

本物の歯には根っこがあり、その根っこはあごの骨に埋まっています。
上下総入れ歯の場合の噛む力は、本物の歯の3割程度だと言われています。

これを踏まえて細かい部分を見ていきますと、自費の入れ歯に使われている材質やインプラントを併用した入れ歯などは確かに『噛む』という点では有利ではあります。
しかし、「保険の入れ歯だから噛めない」というようなことはありません
僕たち歯科医師は自費だろうが保険だろうが、噛める入れ歯を作るために最大限の努力をするべきなのです。ただ、入れ歯を支えるあごの骨の状態によっては、中々噛むのが難しい方がいらっしゃるのもまた事実です。

保険と自費の違いは素材の違いです。
入れ歯で分かりやすい例だと、金属+プラスチックの入れ歯と、プラスチックのみの入れ歯などがあります。
今や入れ歯にはたくさんの種類があり、果たして自分にはどの入れ歯が合っているの?と混乱されている患者さんもいらっしゃると思うので、この話はいずれホームページでもさせていただこうと思います。

結論としては、保険の入れ歯は噛めないように作っていると言うのは間違いです。
噛めるように様々な工夫を凝らしてなお噛めないようであれば、それでも何か出来ることはないかと考えるのが僕ら歯科医師の役目だと考えて、僕は治療に当たっています。

まとめ

いかがだったでしょうか。

しっかりと噛める入れ歯を作るにはどうしても回数がかかってしまいます。
通いやすい町の歯科医院で末永くサポートさせていただければと思い、僕の入れ歯治療に対する考えを書いてみました。

  • 咬むと痛い所がある
  • ゆるい、外れやすい
  • 物が詰まる
  • かみ合わせが合わない
  • 頬、舌を咬む

このようなことで入れ歯でお困りでしたらぜひ一度ご相談ください。
陽だまり歯科はあなたのご相談をお待ちしております