こんにちは。 陽だまり歯科院長の猿田陽平です!
今回は歯槽膿漏(しそうのうろう)と歯周病の関係についてご説明したいと思います。
もう先にズバリいってしまいますと
歯槽膿漏 = 歯周病
です。
最近ではCMでも【歯槽膿漏】という言葉はあまり聞かなくなってきましたが、歯槽膿漏と歯周病……、みなさんはどっちの方がなじみがありますか?
今回は、歯槽膿漏や歯周病がなんでこんなややこしいことになっているのか、歯肉炎とか歯周炎って名前も聞いたことがあるけど、それと歯周病の関連性などのお話をしたいと思います!
歯周病はかつて歯槽膿漏と呼ばれていた
そうなんです。 歯周病の昔の名前が歯槽膿漏なんです。 正確には【歯槽膿漏症】という名前の病気でした。
僕が大学で習ったころにはもう歯槽膿漏という言葉はなく、全て歯周病という名前になっていましたが…
そういえば一体いつから歯周病になったんだろう?
本当に歯槽膿漏という言葉はなくなったんだろうか?
というわけで、調べてみました!
根拠① 学会の名前が変わった
僕も所属している日本歯周病学会の公式サイトの「沿革・歴史」というページに…
昭和33年(1958年)より昭和42年(1967年)までは「日本歯槽膿漏学会」という名称で行われるが、翌年の昭和 43年より「日本歯周病学会」と改名
どうやら昭和43年に歯槽膿漏あらため歯周病となったようです。
根拠② 学会が別の名前で呼ぶよう指示している
同じく歯周病学会の「学会誌投稿」というページに「投稿の手引き」というPDFファイルがあるのですが…
6. 本誌では,特に下記の用語について統一して使用することとする。
- 歯齦,歯ぐき→歯肉
- 歯垢,歯苔,プラック→プラーク
- 盲嚢→歯周ポケット
- 歯槽膿漏症→慢性歯周炎
と、学会公式に「歯槽膿漏症のことは慢性歯周炎と呼んでくださいねー」と決められていました。
根拠③ 専門書からも消えている
僕が使っている歯周病学の専門書『臨床歯周病学』の巻末の索引を見ると
「しそう…」で始まるところに【歯槽膿漏】が載っていません。
というわけで、今は歯槽膿漏ではなく歯周病と呼ぶのが正式です。
ただし、これは僕たち歯科医師にとっての話なので、患者さんは歯槽膿漏でも歯周病でも好きに呼んでください!
でももし豆知識として知っているとですね…
こんな時にちょっぴり「フフフ」と得をするかもしれません!
こないだ歯医者に行ったら歯槽膿漏って言われましたの…
あらやだ奥様ったら!
歯槽膿漏は今は歯周病って言いますのよ。
昨日、陽だまり歯科のホームページで見ましたわ
まぁ!
私も陽だまり歯科へ行こうかしら!?
ご来院、お待ちしております!
なら歯肉炎と歯周炎は何なのか
ここまで読んでくださった方は【歯槽膿漏】と【歯周炎】の関係はご理解いただけたと思います。
次は【歯肉炎】と【歯周炎】です。
実は歯周炎は先ほどちょこっと登場していました。
歯周病とは、歯ぐきに細菌が感染することによって起こる病気です。
細菌感染によってまず歯ぐきに炎症が起きます。
歯周病が進行すると歯ぐきの中にある骨(歯槽骨)に炎症がおよびます。 炎症が起きている場所は酸性になるので、骨は徐々に溶かされていき、やがては歯が抜けてしまいます。
この「歯ぐきに炎症が起きている状態」を歯肉炎と言います。
(歯ぐきのことを専門的に【歯肉】と呼ぶからです)
進行して骨が炎症を起こし始めると歯周炎と言います。
(歯肉、歯槽骨などを合わせて専門的に【歯周組織】と呼ぶからです)
つまり、簡単に
歯肉炎 = 軽度の歯周“病”
歯周炎 = 中度以上の歯周“病”
のように考えてください。
歯肉炎の段階なら歯を支えている骨はまだ大丈夫!
歯周炎になると歯を支えている骨が溶け始めている!
分かりやすいように分類すると、次の図のようになります。
結論だけ簡単に
歯槽膿漏とはなんですか?
かつての歯周病の名前です。
昭和43年に「日本歯槽膿漏学会」は「日本歯周病学会」と名を改め、今では歯槽膿漏症のことは慢性歯周炎(中度以降の歯周病)と呼ぶように言っています。
歯肉炎とはなんですか?
軽度の歯周病です。
歯ぐきだけに炎症が起きている状態を指します。 (歯ぐきのことを専門的に【歯肉】と呼ぶからです)
痛みなどの強い自覚症状がなく、自分では気付かない場合が多いです。
歯周炎とはなんですか?
中度以降の歯周病です。
歯ぐきだけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)にも炎症が起きている状態を指します。 (歯肉、歯槽骨などを合わせて専門的に【歯周組織】と呼ぶからです)
歯周炎になると骨は徐々に溶かされていき、やがては歯が抜けてしまいます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
歯槽膿漏と歯周病の関係、歯肉炎・歯周炎などの似た名前の分類についてお話ししました。
歯周病は日本人の9割以上がかかっていると言われています。 歯が抜けてしまうだけでなく、糖尿病や心筋梗塞などの全身疾患との関連性も明らかになってきました。
歯周病は日頃から歯石取りを続けていくことで、予防または改善することができます。 定期的に歯医者にかかる癖をつけて、しっかりと予防していきましょう。
陽だまり歯科はあなたのご相談をお待ちしております。