こんにちは。 陽だまり歯科院長の猿田陽平です!
今回は「予防歯科」という言葉についてご説明しようと思います。
先に言ってしまいますが、予防歯科というのは診療科の名前ではありません。
最近は「予防歯科」という言葉がいろいろなところで、いろいろなニュアンスで使われるようになりました。
そのせいで患者さんからすると
どれのことを予防歯科と呼んでいるのか分からない!
となってしまっているのではないかと思います。
今回はこのような予防歯科にまつわるモヤモヤを取り除けるようご説明できたらと思います!
予防歯科は診療科の名前ではありません
「○○歯科」となっているので、小児歯科や口腔外科のように診療科の名前だと思われている方が多いのではないかと思います。 ですが予防歯科は歯医者の診療科のひとつではありません。
医療法で決められている歯科の診療科はたった4つだけ。
- 歯科
- 小児歯科
- 矯正歯科
- 歯科口腔外科
(この4つの組み合わせも実は許可されています、小児矯正歯科とか)
この4つの中に当てはめるなら予防歯科は「歯科」に含まれます。
「歯科」とは?
これも患者さんには分かりにくい表記だと思います。
「歯科」とは、一般的な歯科治療を行う診療科のことです。 もうちょっと伝わりやすくするために「一般歯科」と書いてあることもありますが同じものです。
イメージとしては、むし歯科、歯周病科、入れ歯科などを合わせたものと考えてください。
実は歯医者はあまり「予防歯科」という言葉を使いません
お話しした通り、「予防歯科」という診療科はありません。
ですが診療科だと勘違いさせてしまいやすい言葉です。
そのため、僕たち歯科医師は看板やチラシ、ホームページなどで「予防歯科」と書くことを制限されています。
僕が「予防歯科」のお話をする時は、単に「予防」と呼ぶことが多いです。
このページでは「予防歯科」という言葉を多用していますが、「予防歯科」という診療科として患者さんを誘引する目的ではなく、一般に使われている「予防歯科」という言葉の意味をお伝えするために使用しています。
なら「予防歯科」とは何なのか?
予防歯科とは、「むし歯や歯周病を予防しましょう!」という考え方や心構えのことです。
むし歯や歯周病になったら治療する!
ではなく、
そうならないように普段からお口の中の手入れを頑張っていきましょう!
という運動だと思ってください。
むし歯や歯周病を予防するためには、家での歯磨きと歯医者さんでの定期的なチェックとクリーニングが欠かせません。 なので歯磨きの意味で「予防歯科」という言葉が使われることもありますし、歯科検診の意味で使われることもあります。
このあたりがモヤモヤしやすい原因かなと思います。
分かりやすく図にすると次のようになります。
自宅で行う予防を「セルフケア」、歯医者で行う予防を「プロフェッショナルケア」と言ったりします。
具体的にどういうものを予防歯科と呼ぶ場合があるのかをご紹介します。
歯磨きは予防歯科?
歯磨きも予防歯科です。
クリニカのCMで「予防歯科」と呼んでいるのは歯磨き(セルフケア)のことです。
このCMに出てくる「予防歯科を始める」という表現は、「むし歯や歯周病を予防しようという意識を持って、今まで以上に丁寧な歯磨きを始めましょう」みたいなニュアンスで使われています。
定期検診や歯科検診は予防歯科?
歯科医師の立場からすると、これが予防歯科そのものと言ってもいいかもしれません。
定期検診では、むし歯や歯周病になっていなくても定期的に歯医者に通い、お口の中のチェックとクリーニングを行います。
まさしく予防歯科です。
歯科検診と呼ぶ場合もありますが同じものです。
歯のクリーニングや歯石取りは予防歯科?
基本的には予防歯科に含まれます。
既に歯周病になっている患者さんへ行う場合は、厳密には「予防」ではなく「治療」です。
ですが、目的とするところは同じなので、あまり区別せずに使われることがあります。
むし歯や歯周病の治療は予防歯科?
これも上と同じですね。 厳密には異なりますが、まとめて予防歯科と呼んでいるケースもあるでしょう。
特に歯周病は治療後の定期的な通院(メインテナンス)も含めて歯周病治療です。 治療も含めて予防歯科と呼んでいる場合があると思います。
なぜこんなに「予防歯科」と言われるようになったのか
歯周病の恐ろしさが明らかになってきたからだと思います。
歯周病は古くは「歯槽膿漏」と呼ばれていました。
【豆知識】歯槽膿漏と歯周病の違い、ご存じですか?
今回は歯槽膿漏(しそうのうろう)と歯周病の関係についてご説明したいと思います。 もう先にズバリいってしまいますと……これは是非ページを見てご確認ください! 歯槽膿漏や歯周病の他に、歯肉炎や歯周炎という似た名前も、もしかすると聞いたことがあるかもしれません。 この4つをどう区別しているのか、分かりやすくご説明しています。
歯槽膿漏は今で言う「重度の歯周病」のイメージですが、重度になってから治療を始めたのでは元の健康な状態に戻すことが非常に難しいです。
そのため、歯槽膿漏(段階が明確に決まっていなかった)から歯周病(軽度~重度)と名を改め、
なるべく軽度の段階で治療を始めましょう!
そもそも歯周病にならないように予防を行っていきましょう!
と歯科全体が動き始めました。
以前のコラムで書いた8020運動も同じです。
このような背景からみなさんに予防の重要性を知ってもらうために「予防歯科」と頻繁に言われるようになったのだと思います。
日本人は予防の意識がとても低い
これも原因のひとつです。
先進国の中で日本人の予防に対する意識はとても低いんです。
今、これを読んでくれている方の中で一体何人がちゃんと定期検診に通っているでしょうか?
次のグラフはクリニカでお馴染みのライオン株式会社が2013年に行った調査の結果です。
日本人、アメリカ人、スウェーデン人それぞれ1,200人に「ここ1年間で何回歯科検診を受けましたか?」と聞いた結果です。 横軸は受診回数、縦軸は割合(%)です。
日本人は6割近くの人が一度も検診に行っていませんが、逆にアメリカ・スウェーデンは7割近い人が一度以上行っています。
この現状も「予防歯科」とよく聞くようになった理由のひとつだと思います。
アメリカで定期検診受診率が高い理由
そもそも、アメリカの歯科治療には保険治療なんて概念がありません!
全て自費診療になります!
虫歯になったら、削って埋めるだけで○万円。
酷い虫歯になって神経治療になったら、神経のくだ一本あたり○万円。
奥歯だと一本の歯に神経の管(くだ)が3~4本あるので、十数万円~数十万円。
歯を抜くだけでも○万円。
何故伏字にしているかというと、アメリカでは大学病院で治療を行えば安く済ませられます。これは、若手の歯科医師の練習台になるからです。教授職についてる方は各自で歯科医院(オフィスと呼ぶことが多いようです)を経営しています。当然、若手の歯科医師よりも数段良い治療を行っている自負があるため、治療にかかる費用は数倍に跳ね上がります。
日本では大学病院はよりよい治療を受けられる、総合的に診てもらえる。と言うイメージがついていますが…
若手の歯科医師が入れ歯を作っても、教授が作っても保険診療では同じ値段になります。僕も若手時代には当然、しっかり勉強をして、練習を積んで、治療計画をしっかりと立て、患者さんの治療に備えていましたが、諸先輩方の経験には及ぶべくもありませんので、忸怩(じくじ)たる思いをしながら頑張ったものです…
話が逸れました…!
何が言いたいかと言うと、
欧米諸国では虫歯になってしまうと、高額な治療費を払わなければならなくなるため、そうならないように歯医者に定期的に通院する。
と言う概念が国民全員に意識づけられていると言う事なんです!
日本とは全然違いますね。
まとめ
「予防歯科」という言葉に対するモヤモヤは解決できたでしょうか?
改めてまとめると、
- 予防歯科は歯医者の診療科の名前ではない
- 予防歯科とは「むし歯や歯周病を積極的に予防していこう!」という運動のこと
- 家で行う予防(歯磨きなど)も予防歯科と呼ばれている
- 歯医者で行う予防(定期検診など)も予防歯科と呼ばれている
使う場面によって幅広い意味で使われているので混乱されている方も多かったんじゃないかと思います。
もし豆知識として知っているとですね…
こんな時にちょっぴり「フフフ」と得をするかもしれません!
このあいだ歯医者へ行ったら小児歯科はあったのに予防歯科が見つかかりませんでしたの…
どこの歯医者さんなら予防歯科やってるのかしら…
あらやだ奥様ったら!
予防歯科というのは普段から予防をがんばりましょうという考え方のことですわ。
昨日、陽だまり歯科のホームページで見ましたの
まぁ!
私も陽だまり歯科へ行こうかしら!?
ご来院、お待ちしております!
予防歯科という診療科はありませんが、当院でも予防には力を入れております!
歯石取りだけのご相談?もちろん来てください!歯周病予防に歯石除去はとても大切です!
歯石取りは自分でできるのか? 歯医者でやってもらうといくらくらいかかるのか? 歯石取りには保険が利くのか? 歯石取りに関する様々な疑問にお答えしています! 当院は歯石除去だけでも来ていただけますので、お気軽にご相談ください!